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03/13/2026
Vol.23 宇宙の歓喜-スクリャービンの光の波動
宇宙の歓喜-スクリャービンの光の波動
4月に開催するバロック演奏会でピアノを担当してくださる山本奈央さんが主催するコンサートに足を運びました。
プログラムの中に、スクリャービン《プロメテウス ― 火の詩》のピアノ編曲がありました。
初めてスクリャービンの音楽を聴いたとき、私の耳に届いたのは旋律というより、むしろ「光の揺らぎ」でした。
音が進んでいくというより、音が空間に舞い、きらめきながら揺れている。高音の粒が散り、低音がそれを支え、その上でピアノの響きがまるで踊るように広がっていく。
音楽を聴いていて、このような光を感じる経験はあまりありませんでした。
彼は《プロメテウス》において、音楽とともに色彩の光を一体の芸術として表現しようとしていたといいます。
その説明を聴くまでもなく、耳はすでにそれを感じ取っていました。
音が揺らぎ、きらめき、空間に漂うとき、そこには確かに光の気配がありました。
考えてみれば、水も光も音も、すべて波動です。
水面の揺れも、光の振動も、空気の震えも、この世界に現れるものはすべて波動として存在しています。
古代の思想家ピタゴラスは、宇宙は調和によって成り立っていると考えたそうです。天体の運動さえも一つの音楽であると想像し、それを「天球の音楽」と呼んだといいます。人には聞こえないその響きが、宇宙を満たしていると考えたのでしょう。
もし世界が波動によって成り立っているのだとすれば、音楽とはその波動に耳を澄ます営みなのかもしれません。
自然の中に耳を澄ますとき、私たちはそれに似た感覚を覚えます。
風が木々を揺らす音、川の流れ、森に囀る鳥の声。それらは旋律ではありませんが、確かにこの世界の響きです。
想うに、自然から聞こえてくる音だけが音楽なのではありません。
新緑の森や、光を受けて輝く川の流れなど、目に映る自然そのものもまた、私たちの心を震わせます。
それらは音ではなく、光の波動によって現れる自然の芸術なのではないでしょうか。
自然そのものが、すでに一つの大きな芸術となっています。
波動は、音となり、光となり、水の波となって、この世界の歓喜をさまざまな姿で現しています。
それは、この世界が生きている証でもあります。
芸術とは、この世界を満たしている波動に耳を澄ます営みなのかもしれません。
私は、宇宙の歓喜の声を聴いていました。
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